#13 CLのクラブ
醜態、と呼ぶのが正しかっただろう。
3週間前、パリの地でレアルマドリーは敗れた。
1-0という数字以上の意味を以て敗れた。大敗だった。
GKのクルトワのみが息を吐く中、フィールドに立つ10人は呼吸を整える暇を与えて貰えなかった。
私が3週間前に記した、中盤においてはレアルマドリーが上回るだろう、という予想も机上の空論に過ぎなかった。
マドリーは加えて、日本時間明朝行われる第2戦に向けて、カゼミロとメンディを出場停止で失い、トニ・クロースが負傷明けで万全ではない。
この状況下、希望はほとんど見えない。
カルロ・アンチェロッティ監督はこの3週間、多くの選択を強いられてきた。
カゼミロとメンディが第2戦不在であることから、明日の試合までのリーグ戦3試合では彼らをベンチに置き、他のオプションを試すべきだという声が上がった。
しかし、レアルマドリーには暗黙のルールがある。シーズンを終えた時、タイトルを1つも持っていなかった場合、その監督は解任されてしまう。例外はない。
そのため、アンチェロッティはリーグ戦で半ば挑戦じみたオプションを使うことはしなかった。カゼミロとメンディそれぞれを3試合でスタメン起用し、全ての試合に勝利した。
アンチェロッティはCLのためにリーグ戦数試合を捨てる選択はせず、外野の声をシカトした。
だが、リーグを制覇しようとも、明日の試合で更なる醜態を重ねることになればアンチェロッティの首も危険に晒される。
ティボー・クルトワが繋いだ少ない可能性を信じて戦わなくてはならない。
そして何より、クラブは明日の勝利に死力を尽くしている。
現在工事中の新サンティアゴ・ベルナベウは明日のために収容人数を60,000人に増やし、前日会見ではスターティングメンバーについて黙秘を貫き、カルロ・アンチェロッティはファンを煽った。
状況は関係ない。勝たなければいけない。
レアルマドリーはCLのクラブなのだから。