#18 最も欲しいもの
エンバペ獲得失敗の衝撃は痛烈だった。
昨年の夏の終わりから、マドリディスタはエンバペがこの夏にレアルマドリーの選手になるものだと確信し疑うことはなかった。
もちろんクラブも、常に楽観的だった。
こうした態度の根底にあったのは、"エンバペの夢"である。
彼がクリスティアーノ・ロナウドの大ファンであり、レアルマドリーをキャリアの最終目標として据えていることは公にされていた。
金銭的に、マドリーはPSGより劣るのが現実で、より良いオファーを提示できるのがPSGであることは明白だった。だからこそマドリーは"夢"という情緒的な側面で訴えた。人の夢は簡単には終わるものでないから。
エンバペは6月30日にPSGとの契約が切れる予定だったので、PSGかレアルマドリーかを選ぶことができる立場にあった。
その上でエンバペは"夢"を切った。
レアルマドリー会長であるフロレンティーノ・ペレスにとっては、ネイマールに続く2度目の一大プロジェクトの失敗と言えるだろう。
エンバペの決断が非常に遅かったことから、おそらくはエンバペ獲得失敗時のセカンドオプションの候補筆頭であったハーランドの獲得に乗り出す暇はなくなっており、ハーランドはすでにマンチェスター・シティの手に収まった。
エンバペの決断の遅さは批判の対象となった。
確かに拗らせ過ぎであるし、拗らせた結果が寝返りなのだから最悪だ。
それだけレアルマドリーはエンバペという選手にクラブの未来を託すつもりだったのだ。
エンバペ、ハーランド。
次のメッシ、ロナウドと呼ばれる2人が寸前のところで手元から零れ落ち、失意の真最中だが、週末はやってくる。
CLのファイナルだ。
当ブログでお伝えしてきたように、レアルマドリーはCLのクラブである。
もうエンバペはやってこない。欲しい選手を何でもかんでも手に入れることができる数年前のレアルマドリーの姿は無くなってしまったのかもしれない。
しかし、1番欲しいのはエンバペではない。
最も欲しいものはもう目の前にある、14度目のCLタイトルだ。
エンバペが喉から手が出るほど欲しがっているCLのタイトルを、PSGの本拠地であるパリの地で、14個目のビッグイヤーを当然の如く掲げて見せよう。